アーカス・リサーチは、アーティスト、キュレーター、研究者、博士過程の学生、作家など、文化・芸術分野の実践者や専門家を対象に、創造的な実験やフィールドワーク、リサーチのための時間と環境を提供する自己主導型の短期レジデンスプログラムです。 アーカス・リサーチに参加することで、日本のアートシーンやあらゆる領域の研究施設とつながりながら、落ち着いた環境で自らの創作に打ち込むことができます。また本プログラムは、参加者にとって自らの活動を振り返り、思考を掘り下げる機会となる他、創造的なプロセスを育むためのプラットフォームになることでしょう。
アーカスプロジェクトは、過去 30 年間にわたり、レジデンスプログラムやラーニングプログラムをとおして、時間、 空間、活気あるコミュニティとのつながりを提供することで国内外のアーティストを支援するとともに、知識や 問題意識を広くアート界や市⺠社会と分かち合ってきました。これまで培った経験と文化的な資源を活かし、ア ーカス・リサーチという新たな枠組みにおいて、アーティストに限らない、文化、芸術分野のあらゆる実践者と協働するとともに、芸術の領域を横断する創作活動を支援してゆきます。
世界22カ国・地域より47件の応募があり、厳選なる審査の結果、5組のアーティストを選出しました。
レジデンス期間:2024年6月7日―7月6日
レジデンス期間:2024年7月10日―8月8日
世界15カ国・地域より24件の応募があり、厳選なる審査の結果、3組のアーティストを選出しました。
レジデンス期間:2025年1月16日―2月14日
カナダ
カナダのニューファンドランド・ラブラドール州を拠点に、現代美術を専門とするキュレーターおよびライターとして活動している。2022年からボナヴィスタ・ビエンナーレの芸術監督を務める。これまでにレミー・モダン(カナダ)やクリーブランド現代美術館(米国)でキュレーターを務めた。『CURA』や 『BlackFlash』、『Foam Magazine』、『frieze』などに執筆している。アーカスプロジェクトでは、海洋や海辺の生き方に関連する活動に取り組むアーティストをリサーチし、将来的なコラボレーションの可能性を探る。
www.rosebouthillier.com
ロシア/英国
アーティスト、リサーチャー。民俗学や民間伝承、魔術、儀式などに関心を持ち、アニメーションやインスタレーション、パフォーマンスが交差する領域で制作している。アニメーション作品は多数の国際映画祭で紹介され、イングランド芸術評議会や英国アカデミー賞などで評価されている。アーカスプロジェクトでは、男女二柱の祖神が祀られている筑波山における神事や、日本の神道の伝統とイギリスの民間伝承を結びつける遺物について調査し、2つの文化間、または広く人間の歴史の儀式的な慣習の共通点を紐解き制作に繋げる予定。
www.nicaharrison.com
ベルギー
ジェンダー、レズビアンのアイデンティティへの関心を背景にアートとエコロジーの領域において、アーティスト、ライター、研究者として活動する。2022年よりアントワープ王立芸術学院の芸術研究員として、アカデミー内にコミュニティガーデンを作り、学生とともにエコフェミニズムの実践をとおして生態系の回復に取り組む。2019年からは、元修道院の庭の再生を通じて、脱植民地主義やクィアネス、エコフェミニズム、気候変動といったテーマと植物学を結びつけるプロジェクト「Gesamthof」を実践している。アーカスプロジェクトでは、日本各地の庭園を訪れ、伝統的な園芸と現代の園芸の比較研究を行い、エコロジーについての対話を深める予定。
www.elinedeclercq.com
シンガポール
アーティスト。主に写真とアーティストブックをメディアとして用い、スローアートと言語に焦点をあて、儚いものや身体など、日常的な事象を題材とする。これまでに、マナ・コンテンポラリー(シカゴ)でのグループ展などに参加。オハイオ州立大学図書館やシカゴ美術館附属美術大学にあるアーティスト・ブック・コレクションに作品が収蔵されている。アーカスプロジェクトでは、アーティストブックの制作のために、潮の満ち引きと月の動きにまつわる時間の経験の調査、日本の俳句に関する文献の調査、月や潮の観察記録などをまとめ、波のフォトグラムを制作する予定。
www.angelicaong.art
オランダ
写真: Adriaan van der Ploeg
パフォーマンス、映像、リサーチ、執筆を通じて、建築デザイン、政治、社会の交点を考察する。美術と建築の理論から影響を受け、両分野の言語や美学を行き来する作品を制作している。特に1950年代以降の建築に興味を持ち、建築やその計画に組み込まれたイデオロギーに焦点をあてながら領域横断的なリサーチを行っている。これまでに、De AppelやKunstinstituut Melly(オランダ)、Extra City Kunsthal(ベルギー)、Kunsthalle Basel (スイス) 、Centre Culturel Suisse (フランス)といった美術館やアートセンターで発表している。アーカスプロジェクトでは、つくば研究学園都市を題材に都市計画とユートピア思想の関係について、インタビューや現地調査に取り組む予定。
www.michielhuijben.nl
デンマーク
写真: Munzer Hodayfa
哲学を学び、詩やアニメーション映画から影響を受けながら、彫刻や版画、ドローイング、ライティングを通して悲しみや生成変化ついて探究する。幼い頃に父親を亡くした自身の経験から、存在と不在、生と死の融合について見つめなおす作品集、『Drawn To The Pencil; Dark Light Glitter』(2023年)を出版。アーカスプロジェクトでは、植物の主体性に着目し、日本のアニメーション映画と植物の相互関係を調査する。アニメーション映画と植物の歴史を学び、その文化的背景を捉えるべく、アニメーション映画の研究者へのインタビューや国立映画アーカイブや茨城県自然博物館でリサーチする予定。
https://www.rebekkahilmerheltoft.com
オーストラリア/オランダ
オーストラリアのメルボロンを拠点に活動するペインター、アーティスト。抽象絵画を通して、色彩の相互作用と絵の具による表面張力の関係を探求する。近年は絵画をベースにしながらも、彫刻的な方法で空間にアプローチする作品づくりに関心を寄せている。アーカスプロジェクトでは、視覚言語や色彩、パターンによるテキスタイルの手法に着目しながら、日本の伝統的な織物や染物、絞りの技法と歴史を調査する。結城紬や久留米絣の現場に出向きリサーチやワークショップに参加し、作品制作に繋げる予定。
www.marleemcmahon.com
日本
ミクストメディアによるインスタレーションや、ビデオインスタレーションの作品制作、展示の企画などを行うビジュアルアーティスト。事実として認識されていることや、小説、神話をモチーフにフィクショナルなもう 1 つのストーリーを構築し、作品化する。2008年に武蔵野美術大学の映像学科を卒業。2016年に東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻を修了。自身で企画した展示に《メランコリア》(2019)、《Ψの庭・Φの夢》 (2022)、《Geist Enclosure》(2023)などがある。アーカスプロジェクトでは、2024 年に制作した中編映画作品《Lethe》の モチーフである『真景累が淵』の物語の発端である累が淵を手掛かりに、物語に登場する場所と物語の関係性をリサーチする。